2025.5.13
向日葵の咲くお墓に込められた、静かな祈り
葵区/静岡寸法和型墓石
「お墓をお願いしたいのですが」 そうご依頼いただいたのは、あるご家族からでした。 お話を重ねる中で、亡くなられたのはご家族の大切なお嬢様であることがわかりました。 ご家族は皆、どこまでも冷静に話されていましたが、今思えばその裏には、 「人様にご迷惑はかけまい」という強いお気持ちがあったのではないかと感じています。 若くして娘を、妹を亡くすという悲しみ。 それは、経験した人にしかわからない、深く、言葉にならないものだったと思います。 お選びいただいたのは、昔ながらの伝統的な和型墓石。 納骨の日、ご家族のほかにもう一人、若い男性の姿がありました。故人のご婚約者でした。 彼もまた、最後まで一言も涙を見せることなく、静かにその時を見届けていました。 お墓の前には、故人が好きだった向日葵の花がたくさん供えられていました。 その明るい黄色が、夏の空にまっすぐ伸びるようで、胸に残っています。 このお仕事を通じて、私は多くのことを学びました。 石を扱うという「仕事」の意味、人とのご縁のありがたさ、そして—— 悲しみの中でもなお、人に迷惑をかけまいとする日本人の静かな美しさ。 これは、私が初めて直接お墓を建立させていただいた時の、大切な記憶です。